相手の立場で考える。
その想像を、確かめる問いへ。
「忙しいはず」と連絡を控えた。その人が待っているものは、聞いていたか。
- 見えている一件
- 予定表には会議が続く。確認の連絡を控えた。
- 見方をひらく問い
- 相手の事情を、想像だけで決めていないか。
別部門の担当者に、確認したいことがある。予定表には会議が続いている。「忙しいはずだから、今はやめておこう」と連絡を控えた。相手がこちらの何を待っているかは、聞いていない。
研究の内容を仕事に引きつけて考えるための、架空の場面です。この場面で見えていること
予定表に会議が続いている。こちらからの確認は、まだ送っていない。
まだ、確かめていないこと
「今連絡すると、相手の負担になる」と考えた。しかし、相手が今必要としている材料や、連絡を受け取りたい時期・方法は、まだ確かめていない。
想像した事情を、本人から聞ける情報につなげる。
相手の時間を大切にしたい。その気持ちから、連絡を控えることもあるでしょう。ただ、この場面で見えているのは予定表です。「今は連絡してほしくない」という本人の希望まで、分かったわけではありません。こちらの資料を待っている可能性もあります。それも、今のところは想像です。
研究で確かめられたこと。Eyal・Steffel・Epley(2018)は、感情や好み、意見などの予測を25の実験で調べました。相手の立場を想像するよう促す指示は、予測の正確さを一貫して高めませんでした。これは、想像の価値全般を否定する結果ではありません。
最後の実験では、地域で募った恋人や配偶者からなる異性カップル104組を5条件に分け、20項目の意見を予測させました。相手の一日を約5分想像して書く条件や、本人に全項目・半数の項目を約5分尋ねる条件などを比較しました。直接尋ねる条件で予測は改善し、半数だけ尋ねた条件の改善は主に尋ねた項目に限られました。
研究の範囲と限界。この実験は、パートナーの回答を予測する課題です。職場での連絡や、仕事の成果を直接検証してはいません。本人の説明にも、言いにくさや自分で把握していない事情があり得ます。話せば必ず分かる、とも言えません。
ここからは、この架空の場面を仕事へ持ち帰るための編集上の考察です。相手の事情を想像することを、問いの準備に使ってみます。「会議が多いから、今は困るはず」と結論する前に、何を、どの時期に、どの方法で確かめればよいかを考える。その想像に、本人から得る新しい情報を加えます。
たとえば、「次の作業に向けて、こちらから先にお渡しした方がよい材料はありますか。確認したい点もあるので、連絡しやすい時期と方法を教えてください」と聞くことができます。「忙しいですよね」と自分の見立てに同意を求めるより、本人が事情を説明できる問いを用意します。
問いを送る側も、確認したい内容と実際の期限を短く添えます。会話の時間を決める、文章で受け取る、必要な箇所だけ答えてもらうなど、受け取り方を選べる余地も考えます。本当に連絡を待ってほしい事情があるなら、それも次の判断に必要な情報です。
返答を得たら、最初の想像と、本人から聞いたことを並べてみる。必要な材料や期限は、依頼・予定・記録とも照らし合わせる。まだ不明な点は、不明なまま残します。想像を問いにし、得た情報で見立てを更新する。その一往復を、次の一件で試してみませんか。
「忙しいかもしれない」を、時期・方法・必要な材料を尋ねる問いへ。
返答を聞き、依頼や記録とも照らし合わせて、見立てを更新する。
どちらも確かめて、一件の仕事を考える。
この人が今必要としているものを、私は何から判断し、何を本人に聞けるだろうか。
連絡を控えた一件を選び、見えている事実と自分の想像を一つずつ書く。相手の事情を決めつけず、必要な材料と連絡の時期・方法を尋ねる短い問いに変えてみる。
参照した資料と、読み取れる範囲。
- Eyal, Steffel & Epley(2018)Perspective mistaking: Accurately understanding the mind of another requires getting perspective, not taking perspective
著者の研究ページから公開された論文。25実験の結果と、実験25の対象・方法・結果・限界を確認。職場への応用は本稿の編集上の考察です。
- PubMed:論文の書誌と要旨(PMID: 29620401)
Journal of Personality and Social Psychology, 114(4), 547–571。DOI: 10.1037/pspa0000115。書誌と要旨を確認。
- Mary Steffel:Research
著者による研究一覧と、上記の公開論文へのリンクを確認。